市報松江 2020.10

シリーズ「松江の匠」
松江で先駆けとなるカウンター会席を営む日本料理店の二代目として活躍する糸賀さん。高校卒業後の進路を考えた時、それまで特には料理に触れていなかったものの、自分に料理の道が合っているかどうか見極めたくなり、自らの意思で京都の料理専門学校への進学を決めました。最初は人よりできないのが悔しい気持ちでいっぱいで帰宅後も技術習得に勤しみ、『大根を何度も買うのはもったいない』と空き缶に包丁をあてて桂剥きをしたことも。その後、京都にある寿司割烹店で3年、松江に戻ってからも『上の人に指摘されないようになりたい』とひたむきに技術を磨きました。
この仕事の魅力は『お客さんに喜んでもらえること』。毎月、島根の豊かな食材の中から自身が納得した、選りすぐりの食材を使ったメニューを考えます。料理の味や見た目の美しさ、素材のすばらしさに満足したお客さんから、カウンター越しにダイレクトに受ける感謝の気持ちに喜びを感じ、『自己満足にしたくない。お客さんと(価値を)共有したい』と糸賀さんは言います。そして、コロナ禍で改めて実感したのは『愛される店であり続けたい』ということ。自粛期間中に「店には行けないけどオードブルを注文したい」というお客さんの声は、『求められていないのではないかという不安を打ち消し、本当にありがたかった』と言います。
働き方改革で労働時間の制約が厳しくなる昨今、糸賀さんが懸念するのは、日本料理に限らず職人が技術を磨く機会が失われるのではないかということです。その上で、これから職人を目指す人への糸賀さんの言葉は『いろいろな人にいろいろな話を聞くのが大切。その時に理解できなくても5年後、10年後に腑に落ちることもある』。
“技”が一朝一夕に身に付かないことを知る、匠ならではの言葉にハッとさせられます。
No.7 糸賀 敦史 有限会社いと賀(伊勢宮町)(奨励賞受賞)
推薦団体 松江調理師会
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