| 市報松江12月号目次 |
市報松江 2012.12
松江の皆さん こんにちは
1979年 東京芸術大学 美術学部デザイン科卒業
1995年 東京芸術大学 大学院美術研究科助教授
2000年 東京芸術大学 大学院美術研究科教授
2011年 公益財団法人 日本美術院 評議委員長


 18歳で東京に来てはや40数年。東京の第一印象は 「明るい」 であった。子ども時代を過ごした松江の冬空は、雪が今にも降り出しそうな ねずみ 色。海は深い藍色。 山の土は赤茶色。そんな山陰独特の色彩世界で育った私には、東京は明るくまぶしく感じられた。
 しかし、江戸の色彩を研究するようになって気がついた。 江戸が 「粋」 だと好んだ色は、 明るい原色ではなく、松江で見ていた鼠・藍・茶だったのだ。
  「あかぬける」 という言葉があるが、「赤が抜ける」 つまり 野暮やぼな派手さを超えたところに粋があるのであろう。
 私は今“緑好きの宮廻”で通っている。そうなった理由もやはり松江にある。
 京橋近くのバス停前に 「野津めのう店」 がある。店の前に深い緑(翠)をした 瑪瑙めのう 石が飾られており、私は小学1年から12年間、その石を見つめながらバスを待っていた。 その深い色は、私にとって人生の原点になっている。
 青瑪瑙は古来、勾玉まがたま づくりに使われ、その色は人間の生命の根源を表している。
 数年前、なにげなく野津めのう店の前を通りかかると、青瑪瑙はまだ50年前と同じ所に飾られていた。私はご主人にご無理を言って譲っていただいた。今その青瑪瑙は父親の形見の白っぽい青瑪瑙とともに私のアトリエに飾ってある。50年ぶりに再会した憧れの色の隣で、絵を描いている。
 このように、松江には「粋」と「生き」 の両方が内包された色が存在する。深みのある翠と、鼠と藍と茶。 意気な色彩環境のなかで私は育っていたのだ。
 若草という和菓子とともにお抹茶を楽しむ。美しいみどりが心の中まで染み込んでいる。 松江は色彩感覚を磨く宝庫なのかもしれない。

「東京松江会」への参加者を募集しています。関東地方在住の方でご紹介いただける方はご連絡ください。
〒160-0023 新宿区西新宿7-16-6 森正ビル (株)かもす内 東京松江会事務局TEL03-3361-4094 FAX03-3361-2852