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市報松江 2011.7

神国の首都  Vol.20 燃えるような新緑に囲まれた津和野に所用で出かけました。泊まったのは江戸時代からの歴史を持ち、最近リニューアルした老舗旅館。枕や本の貸し出しなどのサービスが行き届き、若い女性スタッフのさわやかな笑顔、きびきびした応対が印象的でした。
 さて、明朝8時半ごろ、まだ早いと思いながら、それでも津和野名物の源氏巻きを売っている店はないかと尋ねたところ、とっくに店は開いているというのです。旅館から歩いて数分、出発前の観光客がそぞろ歩く通りに面した店は戸が開け放たれ、頻繁にお客が出入りしていました。
 この店は朝7時に開店し、夜は8時までで、定休日はなし。源氏巻きを売るほかの店も同様に7時、遅くとも8時には開店しているそうです。向かい側の造り酒屋も開いており、当主らしき人物が穏やかな笑顔でお客をもてなしていました。盆地に囲まれて観光地や宿、店がこじんまりまとまった津和野だからこその“生きる知恵”なのでしょうか。
 が、帰って土産の入った袋をのぞいたところ、買った覚えのないモノがビニール袋にあるではありませんか。見ると源氏巻きの切れ端で、それもかなりの量が入っていました。店ではお茶をいただきながら軽い会話を交わしただけで、店の人は「おまけ」のことにはまったく触れず、当方は知るよしもありません。これぞ、おもてなしの極意。さりげないサービス、小さなサプライズに驚きつつ、いつの間に微笑んでいる自分がいました。
 翻って国際文化観光都市・松江。観光を生業とする店や旅館、施設では、それぞれにおもてなしに工夫を凝らし、ほかには負けないサービスを自負しているところもあるでしょう。しかし、朝も早くから開いているのはコンビニぐらいで、そこでは源氏巻きの切れ端をそっとしのばせるようなサービスを求めるべくもありません。来たお客に売るのではなく、お客に来てもらう工夫、リピーターになってもらう取り組みこそ肝要ではないでしょうか。これは何も業者だけの問題ではなく、市民の笑顔、ちょっとした親切にも当てはまること。国際文化観光都市60周年の今年、松江市全体で取り組むべき課題と思うのです。
 「小さな津和野だからできること」と言えば、津和野に来たことのある「男はつらいよ」の寅さんがこう切り返すに決まっています。「それを言っちゃあ、おしまいよ」。

(瑛)
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