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市報松江 2015.6

 大盤解説会で小柄な菅井竜也六段の横にいるのは、何とサッカー元日本代表で松江市出身の小村徳男さん。夜行バスで駆け付けた小村さんと菅井六段が将棋とサッカー談義で沸かせれば、会場に入りきらない人たちのために屋外に急きょ設けられたモニターの前では、負けじと立会人の井上慶太九段が即興の解説会を開き温かい関西弁で盛り上げます。見上げれば、月に照らされた松江城。思わず「絵になるなあ」とうなってしまいました。

 夢にまで見た、いや夢にうなされた羽生善治名人に行方尚史八段が挑む第73期名人戦七番勝負第3局(松江市将棋名人戦実行委員会など主催)が5月7、8日に松江歴史館で開催されました。なぜ夢にうなされたかと言えば、将棋ファンならずとも先刻ご承知と思います。そう、去年の名人戦第5局が松江歴史館で予定されていたのですが、羽生名人がよもや(?)のストレート勝ちで第5局は期待むなしく流れてしまったのです。苦節1年、まさに夢のまた夢が実現したのです。

松江は「宝石箱やー」

 将棋とは全く無縁の立場で、関係者の迎えから見送りまでの4日間、それは濃密な時間でした。そのエピソードを“内緒?で皆さんだけに紹介しますね。まず大会前日、市内のお食事処で「鯛めし」を出したときのこと。両対局者とも「おいしい」を連発し、行方八段は3杯お代わりし、隣の私に小声で「明日の対局がなければ5、6杯はいけますよ」。松江歴史館で現代の名工が作った「わらびもち」も「おいしい」「口の中でとろける」と大絶賛。前夜祭に出た「イカのこうじ漬け」「あご野焼き」も大受けでした。正副立会人や将棋関係者、マスコミ関係者にも、かの有名な「ビーフコロッケ」や「ワッフル」「和菓子」を提供したところ、誰かが大声で「まるで宝石箱やー」。

 食いしん坊なので、つい食の話になってしまいましたが、案内した松江城でも両対局者は「堂々としてバランスが素晴らしい」「地味なようで、実に威風堂々としている」と話し、時間があれば登城したい様子で、行方八段は「堀川遊覧」に興味津々でした。

松江の底力を再発見

 大広間にしつらえられた対局室。掛け軸や屏風は市民の所蔵品、床のいけばなは松江の小原雲心を流祖とする小原流。さらに楽山焼、袖師焼の器類、八雲塗、松江市東出雲町に住む新進気鋭の工芸作家作のお盆などが脇を固めます。

国内でも数少ない棋道師範の資格を持つ柳浦正明さんを中心にした「棋翔会」のメンバーがボランティアで下支えするなど、あれこれの「縁」が結び合った結果が、「これまでの名人戦でもっとも印象に残る大会」(井上九段)、「間違いなく、これまでで最高のおもてなし」(主催新聞社の将棋担当者)という最大級の評価でした。

「松江の良さに市民はもっと誇りを持つべきだ」とか「地方創生のキーワードだらけ」などとお説教じみたことは言いますまい。なにせ私自信が再認識させられたのですから…。まだまだエピソードには事欠きませんが、紙面の関係でコラムはこれにて「終局」とさせていただきます。

(瑛)
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