市報松江 2019.2

コラム神国の首都Vol.111

節分の鬼は邪気の象徴。だから、豆(魔滅、魔目)をまいて邪気を追い払う、「鬼は外」と。()った豆をまくのは「魔目を射る」ことからきていると言われています。

昨年11月末、男鹿のナマハゲ(秋田県)など全国各地の奇祭10行事がユネスコの無形文化遺産に登録されました。ナマハゲは鬼の面をかぶり、宮古島のパーントゥ(沖縄県)ときたら泥だらけの蔦を全身にまとい、ゾンビのような気味の悪さなのですが、無形文化遺産に登録されたすべてが来訪神。つまり、鬼ではなく神様で、こちらは「福は内」。不思議なものですね。また、どの行事とも起源が分かっていないのも不思議。鬼神の意味を持つパーントゥは海のかなたからやって来て、福をもたらすとされます。

日本人とバイカル湖

20年ほど前のこと、免疫学者として世界的に知られるO教授から日本人(縄文人)のルーツについて伺ったことがあります。DNA分析で行き着いた結果と記憶していますが、その場所を聞いて驚いてしまいました。朝鮮半島を北に進み、中国東北部をさらに北上したロシアのバイカル湖湖畔の、ある村だと自信たっぷりに言うのです。「その人たちは日本人とそっくりな顔立ちで、しかも日本の民謡とそっくりな歌を歌っている」と、まるで彼らを見て歌を聴いてきたように。

今でこそ日本人のバイカル湖起源説はある程度知られ、一方でDNA研究の進化などによって反論や諸説が出てきているようですが、当時はバイカル湖まで想像の羽を広げることはかなわず、あ然とするばかりでした。が、かの地の歌とそっくりな日本の民謡の存在はずっと気にかかっていました。列島の北の民謡なのか、それとも南なのか、と。

ロシアに江差(えさし)追分(おいわけ)

「それは江差追分ではないですか」。最近、意外な人が答えを導き出してくれました。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)のひ孫の小泉凡さん(小泉八雲記念館館長)で、大学時代の講義で民俗学者のM教授から同じような話を聴いたというのです。凡さんによると、M教授は、シベリア地方に日本の民謡などのコブシに似た歌い方(メリスマと言うそうです)をした歌があり、それが江差追分とそっくりだとして、自ら録音してきたテープを学生に聴かせたそうです。「コブシがきいており、確かに江差追分とそっくりでしたね」と凡さん。それは北海道の、日本海沿岸に伝わる民謡でした。

摩訶(まか)不思議な国

四方を海に囲まれた日本のこと、来訪神はともかく、はるか昔に人が北や南の海のかなたから日本にやって来たのは疑いのないところでしょう。「海によって開かれていた日本」(凡さん)のはずですが、平成の時代が幕を閉じようとしている今になっても、外国人労働者の受け入れ拡大をめぐって、すったもんだする摩訶不思議さ。

小泉八雲は「人はどの土地に住んでも、根底においては同一である」と信じて疑いませんでした。地球儀の日本列島に指を当てて朝鮮半島を経て中国東北部、さらにその先のバイカル湖までなぞらえる。なんとかファーストとやらが跋扈(ばっこ)する今こそ、八雲の精神性が求められているとつくづく思うのです。(瑛)

シリーズ「松江の匠」
市は長年にわたり地域産業の発展に貢献された技能者の方々を表彰しています。
平成30年度 松江市手作り産業優良技能者表彰
№1武田 純
漆工房大燈(東津田町)(功労賞受賞)
推薦団体:全国技能士連合会マイスター会島根支部
木地造、漆塗、絵付と工程別に分業される八雲塗の世界で、
塗師と絵師の二刀流で活躍する武田さん。日本画家の祖父と八雲塗絵師の父を持ち、
幼いころから絵を描くことに触れていたことから、自然とこの道に進みました。
父に師事し、ボタンやツバキといった八雲塗の伝統的な図案を学ぶ一方で、
八雲塗と油絵の技法が似ているといわれていたことから、父と相談し、
洋画家山中徳次氏にその技法を学びます。習得した油絵技法に、
八雲塗の漆塗・絵付の技法を融合させた新しい表現方法は高い評価を受け、
代表作「宍道湖夕景図」は新しい八雲塗の図案として好評を博しています。
今も新しい技法やデザイン探求には余念がなく、
八雲塗の新たな可能性に挑み続けるとともに、伝統の技を後世に伝えるべく、
後進の育成にも熱心に取り組んでいます。
30年度松江市手作り産業優良技能者表彰
受賞者の紹介
30年度も各団体から被表彰者推薦を募集し、
選考委員会の審査を経て昨年11月27日に表彰式を開催しました。
受賞者は次の皆さんです。おめでとうございます。
【功労賞(30年以上従事者)】
武田 純氏(漆器加工業)
福田利浩氏(伝統工芸品加工業)
権田和則氏(左官業)
松浦邦春氏(伝統料理)
山根眞一氏(和菓子製造業)
安食信幸氏(伝統料理) 
【奨励賞(15~29年従事者)】
持田茂稔氏(造園業)
日下志伸氏(洋菓子製造業)
石原智博氏(左官業)
門脇裕二氏(飲食業)
目次潤平氏(陶器加工業)
【問い合わせ】まつえ産業支援センター
電話 60-7101
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